プロジェクト

グローバルCOEプログラム 歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点のパンフレットは、こちらよりダウンロードできます。

グローバルCOE プログラムの終了にあたって

立命館大学G-COE 文化遺産防災学推進拠点
 拠点リーダー 大窪健之

 この度、立命館大学グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」が、グローバルCOE拠点としての活動を完了する運びとなりました。

 本拠点は、21 世紀COE プログラムとして世界に先駆けて実施してきた、歴史都市を自然災害から防御する基礎的な学理構築を、この5年間でさらに拡充し、実社会へ応用・実践することを目指して活動を続けてまいりました。また、多様な地域特性の下で存在する文化遺産を災害から守る普遍的な「文化遺産防災学」の確立を目指し、同時に国の内外を対象とする教育プログラムに展開することで、世界に向けてその成果を発信し、学問分野の礎を世界的規模で築くことを目的としてまいりました。このため、従来の災害科学や防災工学の枠組みを超え、文化遺産防災に関する問題提起や、実践にかかわる人文社会科学的見地をも含めた文理融合型の取り組みが特徴となっております。

 私たち人間は、永い歴史の中で文化を醸成し、その結晶としての文化遺産や歴史都市を育んでまいりました。しかし文化遺産の多くは歴史上、地震、火災、洪水、あるいは戦火等によって失われており、現存するものはほんの一握りにすぎません。災害をこえて先人から受け継いだ貴重な文化遺産とこれを取り巻く歴史都市とを、一体として後世に引き継ぐことは、歴史ある地域とこれを支える人命とを同時に災害から守ることに繋がります。私たちが目指すものは、この意味において、防災・減災という考え方を組み込んだ、新しい文化そのものを追求することにあると考えています。

 立命館大学では、引き続いて歴史都市と文化遺産の防災に取り組んでまいります。「文化遺産防災学」の発展、文化的価値を継承する実践的な防災技術の獲得、即戦力となる実務家と研究発展を担う若手研究者の輩出を通して、当該分野の世界の中心拠点として、社会貢献へ向けた機能を発揮できる教育研究環境を確立していく所存です。今後とも皆様方のご支援、ご協力を賜りますよう、心よりお願いを申し上げます。

東北地方太平洋沖地震に対するグローバルCOEプログラム 歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点からのメッセージ

 この度の東北地方太平洋沖地震による被害を受けられました皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。

 3月11日に発生した現代社会にとって未曾有の大災害は、尊い人命と財産を一瞬にして奪い去り、さらに将来に亘る放射能問題という深刻な結果をもたらしました。
 しかしながら私たちには、歴史の中で幾度もの困難に遭遇し、これを乗り越えてきたという実績があることも、また揺るぎのない事実です。
 私たち日本人にとってのみならず、世界人類にとって無二の遺産である、歴史都市や文化遺産もまた重大な被害を受けています。これらは日本文化の礎であるだけでなく、地域の長い歴史の中で培われてきた文化的活動の結晶であり、これを失うことは私たちの歴史や記憶を失うこと、すなわち私たちが私たちであるためのアイデンティティと、精神的な拠りどころを失うことに他なりません。
 このため、被災をした地域の復旧・復興に取り組むと同時に、損壊しつつも遺失を免れた貴重な地域の文化遺産に対しても、細やかな配慮を持って粛々と時間をかけて復興していくことが、残された私たちの未来へ向けた責務であると考えています。そして再び繰り返さないための対策をすすめることもまた、私たちに突きつけられた喫緊の課題であることを肝に銘じなければなりません。

 私たち、グローバルCOEプログラム「歴史都市を守る『文化遺産防災学』推進拠点」は、そのために必要な努力とサポートを惜しみません。過去を大切に守り、引き継ぐことは、未来へ向けた可能性を守ることであると信じているからです。

 被災された皆さまの安全と、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申しあげますとともに、命を守り、それを支える歴史を守り、これが紡いできた文化遺産と歴史都市を守るために、そして何よりもこれからの未来を輝かしいものとするために、私たちは微力ながらも活動を続けていく所存です。
 文化遺産防災、歴史都市防災の輪を広げるために、皆様のご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願いを申し上げます。

文部科学省グローバルCOEプログラム

人を人たらしめているのは精神活動です。それを形に昇華して後世に伝える文化遺産は、人類にとってかけがえのないものであり、社会基盤の重要な構成要素でもあります。世界の文化遺産はその保護制度が充実しつつある一方で、大規模災害を含めた災害からの防御は未だ極めて手薄な状況にあります。一方、災害科学の分野においても文化遺産を研究の対象とすることは極めて希でした。これまでの21世紀COEプログラムでは文理融合の体制を構築して、世界に先駆けて文化遺産防災学を創成しました。2008年、新しいグローバルCOEプログラムに採択された本拠点では、文化遺産とこれを取り巻く歴史都市を災害から守るための教育研究を推進し、その学理を国際規模で展開し、国内にとどまらず世界各地で文化遺産を災害から守るリーダーとなる人材を育成することを目的としています。

近畿地方などの文化遺産集中地域は内陸地震の多発地帯と重なり、今後約50年は続く地震活動期に入っています。近代以降の都市の拡大によって文化遺産が市街地に埋没したこともあって、我が国の歴史都市と文化遺産はまさに危機的状況に置かれています。一方で大規模災害対策については、我が国のみならず世界的にも手つかずの状態です。我が国だけでも多くの歴史都市があり、世界には700を越える世界文化遺産と歴史都市があります。これらを守るには、各国の政府と地方自治体に数千人規模の文化遺産防災専門家と、研究発展のための若手研究者の養成が急務であり、国際的推進を主導する教育研究拠点の確立が急がれています。

本グローバルCOEプログラムでは、研究対象をこれまでよりさらに拡大深化させ、美術工芸品から周辺環境、世界各地の歴史都市までを含め、文化遺産を周辺の歴史的環境と一体的・総合的に捉えることにしています。さらに「文化遺産防災学」の体系化へ向けて、研究成果の実用化・汎用化と、教育プログラムの開発・普及を図ることで、以下の目標を達成すべく努力してまいります。

  1. 文化遺産防災を担う若手研究者・社会人実務家の人材育成
  2. 普遍性・汎用性のある文化遺産防災技術の研究開発
  3. 文化遺産防災学の教育および研究における国際貢献

研究テーマとしては、4つの研究課題に取り組むことにしています。

  1. 文化遺産の脆弱性:災害時における脆弱性の把握
  2. 歴史災害:歴史に学ぶ減災手法の抽出と現代への応用
  3. 防災技術:文化遺産の危機管理技術と防災施設の開発
  4. 防災計画と政策:文化遺産防災地区計画、ガイドライン・体制づくり

これらの成果を組み合わせることで、山地・山麓・平地・臨水地等の市街地特性や災害類型ごとに活用できる普遍性のある「文化遺産防災対策パッケージ」を創出していきます。これらの成果を文化遺産保護に関わる研究者・実務家の教育プログラムに活用し、さらに現場での研究参加を通じて教育し、世界に類のない文化遺産防災研究のパイオニアを輩出します。

また、国際研究ネットワークの構築に関しては、平成17年の国連防災世界会議において我々が提唱して実現した「文化遺産危機管理」分科会、および国内で運営してきた研究組織「文化遺産防災連絡協議会」を発展させ、「文化遺産防災・国際研究コンソーシアム」を構築し、コンソーシアム・ミーティングを開催することにしています。これに参加する国々の間で、研究者および実務者のネットワークを形成していきます。

以上のように、工学を基盤として普遍性をもつ文化遺産防災学の構築を推進し、文化遺産防災のリーダーとなりうる実務家と研究者を、国際社会に輩出する教育研究拠点を確立することを目指して行きます。国際研修、国際研究集会などを開催し、国際ネットワークを構築して、国内外の文化遺産における大規模災害の危険性を啓発し、世界的規模での歴史都市を守る「文化遺産防災学」の研究推進を定着させるために努力して参りますので、皆様のご理解ご支援をよろしくお願いします。